留学生文学賞シンボルマーク・HOMEへ戻る 留学生による日本語文学新人賞 留学生文学賞
募集(a) 審査結果(r) NEWS(n) スクラップブック(s) 留文書庫(l) 留学生文学賞BBS(b)
 

奨励作品受賞

詩3編  昔の友達・スカートの季節・恋

廬 珊

ロ サン   女性   中国   1983年生まれ
現在:  学習院大学文学部在学中

昔の友達

いつからだろう
その記憶が
乾燥していて
何気なく落ちてきた葉のように
静に時間と一つの整体になっている
灰と藍の色で編まれた思いが
軽く   薄く
目線の下から浮かんで
メモリーの扉を開けている…

眠らない
この綺麗な名前を持っている町
濃い色に変わった空の下では
DISCOやクラブの看板が
鮮やかな赤やピンクに包まれている
特殊な匂いをしている空気を
呼吸   呼吸

違うタイプのアルコール
名前がついていない快感
この夜に存在している
自分というものは
もう既に
留学という言葉を忘れた
夢という言葉を忘れた
親の心配なんか忘れた
自分は誰なのか忘れた…

酔い   酔い
匿名の快感に落ちていく
ずっと   その日まで

不登校   ビザオーバー   退学   違法就労   強制返還…
真っ黒の夜中   目を覚めて

違う方向の人群れ   同じ表情の顔
その中に
夢があった
思い出せない昔から
確実にあった
ただし   もう感じられない
現実と思いたくない現実が
ずれている体と魂の間で
泣く   痛む

「失うものは帰れない」
その言葉は君の苦笑いで振れていた
「元気でね」と言いたかった
「連絡しよう」と言いたかった
成田空港の綺麗な出発ロビーで
結局何も言い出せなかった

銀色の飛行機が続々と空へ
昔の友達よ
この日本という国を
懐かしむのかな…

↑頁先頭へ(t)

スカートの季節

私は女の子として生まれた
スカートが好きな女の子として生まれた
故郷では
春夏秋冬はっきり区別していて
スカートを穿けるのは
夏しかない
夏はスカートの季節

赤、白、青、緑…
七月の花のような
いろいろなスカートを持っている
その私が
春から待っていた
春と区切らない夏と呼ばれる日
スカートの季節はやっと来た
つるつるの太陽の光と
ぴかぴかの友達の笑い声と
蝶々が私のスカートを廻って
嬉しそうに
舞っていた…

と思いながら目白の道で歩いている私
十月の中旬
まだスカートの姿
東京では
スカートがコンビニと同じく年中無休
いつでもスカートの季節
私はもう待たなくていい
自分の好きなスカートを
いつでもどこでも
穿けるようになった

スカートの季節が増えた
スカートの季節が無くなった
嬉しいか   悲しいか
よく分からない

目白という小さな街
いつも静か   いつもきれい
空の色に染められた空気の中
たくさんの女の子がスカートを穿いている
花がない   蝶々がない

秋一枚一枚のスカートをきれいに畳んでたんすに入れよう
春一枚一枚のスカートをたんすから出してアイロンをかけよう
そのとき
そのときの私
そのときの私の   小さな期待

もう戻れなくて
そのまま
心のどこかで保存されている

↑頁先頭へ(t)

恋するとき
寒い夜
彼のコップに温かいお茶をいっぱい注いであげたい

恋するとき
二人で一緒に食べ残しの料理を片付け
一緒にお皿を洗いながら喜ぶ

恋するとき
電話が繋がったら突然何をしゃべればいいか分からなくなって
まさか彼の声を聞きたかっただけ

恋するとき
地位や学歴など全てを忘れ
本当の彼は一人の子供---良い子か悪い子
と思うだけで可愛がってしまう

恋するとき
いつも馬鹿なことを聞いてしまう
「ねぇ、私がおばあちゃんになったらまだ愛してくれる?」
「もちろん」
「歯が全部落ちても?」
「それなら歯茎にキスする」

恋するとき
晩御飯を何回も温めて
「まだ帰ってこないの」と文句を言いながら心配する
そして鍵でドアをあける音を聞こえた瞬間落ち着いた

恋するとき
どんな出来なかったことも
出来るようになった
ただそれが
彼には内緒

恋するとき
彼が嬉しいなら自分も嬉しい
彼が悲しいなら自分も悲しい
その理由は、分からない…


↑頁先頭へ(t)

Web Design © DIGIHOUND L.L.C. 2005-2008

Valid CSS! Valid HTML 4.01 Transitional