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奨励作品受賞

  梅雨     言葉
焼肉屋合唱曲

チョウ シキン

張斯琴   女性   中国   1979年生まれ
現在:  獨協大学外国語学部3年生

詩 『梅雨』

注ぎ降る夏の長い雨
梅雨という名前を持っていた
その贅沢さに私は身を震わせた
知っているかい、梅雨
君を必要としているもう一つの場所があることを

遥かなところに
雨に嫌われたある場所
デジタルのメモリと
私の心の扉の向こうに
その場所の昨日と昨日の昨日
鮮やかに刻まれている

緑茂った草原の甘い風
優しい祖母の布団の温もり
私のつたなさを笑う鹿の遊びと
夜闇の彼方に響く狼の叫び
私が気づかない一瞬
これらにさよならをつげられた

そして

空は壊れ   太陽は怒った
大地は枯れ   鹿は隠れた
夜は沈み   狼は消えた
明日になる直前
私は   風の中   独りぼっち

梅雨      お願い
君のほんの少しの水玉を
私の故郷に分けていただけませんか
私を育てたあの場所
君さえ来てくれれば
すべてが救われる   すべてが

通り過ぎる雲のかけらを
涙目で見つめる故郷のもの
彼らの穏やかな笑顔を
もう一度見たい
その笑顔こそ
私の生きてゆく糧だから

だから   お願い   梅雨
お願いだから

この願い   君に届くように

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詩 『言葉』

私は外国人
あなたは日本人
生まれる前   神様は
私には選ぶ権利を
与えてくれなかった
あなたには

私は“あ、い、う”
あなたは“Yes、No、hello”
衰えていく   仏教の教え
今日   大事なのは
証券と英検
あと   スタイル

私は眠る星
あなたは笑う月
同じ日の光を   借りた
この瞬間   輝けるのであれば
次は関係ない
現代哲学

その中で
私はあなたに出会う
コンクリートの隙間に
私の息の後が挟まれ
救いを求めて
あなたのところに来た
でも   あなたは言葉が違うと
おっしゃる
言葉なんて
同じ音の違う並べだけなのに
並べ替えられるのなら
心は開いてくれるの

音の順番を知らなくても
あなたを愛しむ心には
かわりはない
心には順番なんてないから
心は言葉なんて要らない
世が変わっても

あなたと私の
明日へ進む道
言葉で決められるのは
私はいやだ
今ここであなたに
選択の自由も権利も      ある

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焼肉屋合唱曲

半年前から
ある“合唱団”の“指揮”を務めている
114席の二階立ての焼肉屋の
74席の二階で三四人の仲間と
平日はともかく
土曜日はもっとも仕切りにくいのだ

五時だ“合唱”開始
“すいません”
“ハイ、タダイマ”
“すいません、生”
“ハイ”
“すません、注文いいですか”
“ハイ”
始まりは順調だ

“すいません、生おかわり”
“ハイ”
“追加、いいもの先に頼んでおかないと”
“ハイ”
“お肉まだ”
“さっき頼んだご飯すぐ持ってきて”
“網変えて”
“ハーイ、ハーイ”
一斉に呼ばれても……
“曲”が乱れ始めている
仲間たちが来た   助かる
“カルビはまだなのかなあ”
“締めは何がいい”
“……” “すいません”、“すいません”、“すいません”
“ハイ”、“ハイ”、“ハイ”
ここが峠だ

束の間の仲間の相談
子作りに励んでいる一人が“22卓お茶出す”
リップクリム依存症を抱える一人が
“ラストを取る”
日本語の正しさを求めない留学生の一人が
“飲み物やる”
私“31,32卓帰す”
全員出動で後半の“合唱”始まる

制限時間二時間で
一時間半でラスト
戦いは短くて壮絶だ
庶民に名が高い下町のこの店
普通の私が普通の彼らを
“指揮棒”をとって見守っている
ただこんなにも豊かなのに
飯くらいはゆっくりすればいいのに
と   たまには思う
“合唱”今日も無事終了


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