

まず選考委員の紹介があり、栖原先生の選考経過報告、贈呈式(辻井喬さんと特別賞の福島さん、住枝さん)、選考委員から田原さん、辻井さん(まとめ)の選評があり、この賞発足当時から中心的な役割を果たしてきた作家・宮崎学さんにより乾杯が行われました。アジア諸国の若者を前に、宮崎さんは「この賞を継続したい気持ちが回を重ねるごとに強くなってきた」とのべ、乾杯。続いて作家で詩人の辻井喬さんから留学生文学賞を受賞した黄飆さんはじめ、優秀作品賞となったソバナ・バジュラチャリヤさん、李知蓮さんら9人につぎつぎに賞状がわたされました。
賞の運営を実質的に支えている東大留学生センターの栖原暁教授は文学賞選考の悩みを「率直に言って2つあります。一つは文学作品を選ぶとき、日本語としての完 成度の高い作品を重視すべきなのか、それとも留学生の作品の中には、海外から日本に留学しているという個性的体験が何らかの形で反映されているはずで、そうした内容面をこそ重視すべきではないのかという問題です。結局今回、日本で暮らす留学生であるからこそ描けたのではないかと思われる『バジオ』という作品が、内容や構成等が文学作品として優れている点が評価され、賞に選ばれました」とのべ、同時に「もうひとつの大きなモン ダイはお金がありません」と苦しい財政事情を率直に話し、関係者の協力を訴えました。
辻井喬さんは「初めて審査委員に参加したが、想像以上に力のこもった内容でおどろきました。日本語を使って自分なりの感性を持って、日本生まれの私たちと違う感性が日本語の新しい可能性を切り開いてくれる。常々留学生にもっと感謝しなければ、と常々思っていたが作品を読んでそれが間違いでなかった。今後もいろいろ教わって、豊かさをつけ加えて行ければと思う」とのべられました。

また留学生の相談に長年のってきたCASAの福島みち子さんは「作品の中には日本語はすばらしくても、いささか日本人を主人公にするのに無理がある、と感じたのが何編かあった。CASA賞は自分の感性をストレートに出した作品を選ばせてもらった」 とのべられました。

この賞が生まれるきっかけになった居酒屋「檸檬屋」を経営する住枝清高さんは「小説はすごく力が付いてきたのを感じた。詩が今回少なかったのが寂しい。一編だけなら良いものがあったがあとの2つが弱いと感じるケースが多かったのが残念だった」と詩の応募を奨励する意味で「檸檬屋賞」をつくられました。(「檸檬屋賞」は新宿檸檬屋でタダでお酒が飲める賞ですが、今回の受賞者は女性だったので果たして有効に使われるかどうかはさだかではありません)

第一回受賞者でもある田原さんは「4年前自分もみなさんと同じ立場でこの賞をいただいたが、自分の母国語を乗り越えて文学作品を書くということがいかに難しいかよくわかる。今回 の作品を読んで、自分が受賞したときにこれだけの作品が応募していれば、自分は賞などもらえなかったでしょう」と述べると会場に笑いが広がったのでした。

留学生文学賞を受賞した黄さんは「緊張して何を言っていいのかわからない。この作品は5か月かけて書いて、途中何度もあきらかけたのですが、今思い出してもあきらめなくて良かった。小説を書く、それも日本語で、何度も考えてまとまりませんでした。そのために日本語の小説を読んで勉強になりましたし、日本の文化への理解を深めることができました。この賞と先生方のおかげです。わたしの一生の宝です。ありがとうございました」と受賞の挨拶。
優秀作品賞にえらばれたソバナ・バジュラチャリヤさんは「12月31日の夜に出しました。ネパールは女性教育も発展しておらず、識字率も低い記憶の文化なんです。そこから記録の文 化の世界に来て書くことに苦労しましたが、ネパールの人々にもっと今後書いてほしい、という思いがあって書きました。1行でもよんでくれれば嬉しい」と

この賞に毎回応募している金海鎮さんは「今回、奨励作品賞でしたが前回賞を逃したとき、自分はしつこいからあきらめませんと審査委員に申し上げましたが、今回賞をもらうことができたが、まだまだもっといい賞をもらうまで自分応募し続けますよ」と会場を笑わせました。
日本語の完成度で高い評価を受けたサビネ・シタドラーさんは「日本で長さのあるものは初めて書いて良い評価を受けるとは期待していなかった。長い間日本にいて自分の国も日本でも他人、宇宙人として書いているようなものでした」と笑顔で話しました。
また受賞者の中には「賞がみなさんのポケットマネーで出ていることを知って驚いた」「これからも書き続けていきます」との発言があいつぎ、とりわけ「日本 にきてこれまで何ひとついいことがなかったので、今回のこの賞は涙がでるほど嬉しかった」との留学生の言葉には委員や参加者は今更ながら留学生の置かれている厳しい状況に、この様な賞を続けることの意味をあらためて教えられました。

また、文学賞を受賞した黄さんには、沖縄の民間団体「アジアを歩く石敢當」から、この夏沖縄一週間旅行がプレゼントされ、同会のメンバー・新川美千代さんは「私たちも貧乏でみなさん全員を招待することはできないが、沖縄まできてくださったら滞在・交通費はこちらで負担して沖縄を案内します」との申し出がありました。また副賞とし平瀬卓史さんから入賞者全員に浮世絵を贈られ、大野盛久さんからは日本の農産物の「デコポン」が贈られました。このほか、実に多数の陰で支えてくださったみなさま、どうもありがとうございました。
さて、このように盛大に行われた賞ですが、正直もうしまして現在、今回もしっかり赤字でして、次の賞がどうなるかは現在未定です。果たして存続は可能か? 現在その道を模索しており、この秋頃までには当サイトで発表できるとおもいます。
