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ボヤン賞(第一回留学生文学賞)

詩3編
  冬とは無関係に  日本の梅雨

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質問というわけではない・・谷川俊太郎に

田原 Tian Yuan  男性  中国  1965年生
  立命館大学大学院生

 冬とは無関係に

 一
雪は枝にずしりのしかかり、休息
乾燥していて
たらふく食べた白猫のように
樹から降りられない

 二
樹の上の空は鍋底のように黒々と深く
鴉の黒い高鳴きからは煌めきが零れ
色を持たない冷たい流れが暗幕の下を往き来する

 三
夜が降りてきた
即位した腹黒い帝王のように
そいつは一切を征服しようと
陽に照らされたことのある万物を征服しようと企む

 四
夜と雪とは二相の色である
特殊な匂いをしている空気を
夜がいよいよ暗くなっても、雪はやっぱり真っ白
雪がいよいよ白くなっても、夜は依然として漆黒

 五
風が雪の上を吹いて来ると
風は白く変わり
少女が雪の上を歩いて来ると
雪はその色とりどりの夢を白く染める

 六
常春樹の葉は雪を被ったまま緑の光を探り当て
自分は誰なのか忘れた…
飢えた狼の瞳の中に揺れ動いている
匿名の快感に落ちていく
氷の上にある石は氷の下へ行くことを渇望し
氷の下にある石は喘ぎようもなく
魚式の呼吸を懇願している
そして、雪の下の土地に噛みつ

 七
乾いた枯れ草は雪の重圧の下で
野火に焼かれたいと祈っている
その葉と茎には牛と羊の歯の痕
鎌に刈られて痛み干涸らびた緑の血の斑がまだ残りく
枯れ草は懸命に歯を伸ばす
狂ったように・・
そして、雪の下の土地に噛みつ

 八
真っ黒な夜がのしかかり
その夜の中を純白の雪が降り
軒下の鳥はねぐらへ帰るのを忘れてしまう
鳥達は侘びしく鳴いて
引き金を引く手を凍えさせる

 九
彼方で、黄昏の火影が
夜と雪との二相の色合いで煌めき
広場中央の裸体像は
哀しげに足跡を欲しがっている
「どうぞアヒルの羽入りのどてらを持ってきて下さい」


雪は夜の中を降り重なり
夜は雪の上に凍結し
樹の上の雲は黒く汚れた雑巾のように
天空に凍り付いている

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 日本の梅雨

 一
梅干し好きの日本人は梅の樹によじ登って
青 梅を揺り落とす
梅の実の雨粒であるかのように
ボトボトひっきりなしに落下するのである

 二 
湿った普段着のように梅雨は  
裸の島々をそっと被う

 三
びしょ濡れにされるのを渇望する島々
梅の花びらに埋葬されるのを渇望する島々
傘の下でときめきながら浪漫的な叫びをあげるのである

 四
流れるように移動する傘は雨粒のように多く
日本人の手の中
傘は雨を浴びて開くきのこ
その半分以上は毒きのこの色

 五
梅雨の湿気も届かない所には大抵
たっぷりと塩漬けにされた梅干しが並べられ
紅いそれはまるで島々のしょっぱい涙
高値で出荷されるのである

 六
梅干しは梅雨の内に干し上がることは殆どなく
梅雨も又梅干しが干し上がった後に明けることは滅多にない  
梅干しの青春は一つの季節の内に殆ど失われるのである
その皮の艶は生気のない影となり
柔らかな壁の中へ倒れ込む
硬い種をがっちり包んでいる


梅雨が去った後、梅干しの硬い種は
天の外から飛んできた隕石
金物ゴミバケツの中で音を立てる

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 質問というわけではない ・・谷川俊太郎に


 一
誰? 時間の深みで簫を吹き
簫の音を広漠たる廃墟に木霊させるのは
誰? 竹林を揺り動かし、高原を起伏させ
河の流れを陽の光の下で痙攣させるのは

 二
誰? 僧侶の愛を無理やり奪い取り
僧侶を鐘の音の中で孤独のうちに死なせるのは
誰? 数珠を揉み捩り
数珠に種の膨らむ欲望を芽生えさせるのは

 三
誰? 海底の沈船のように沈黙し
記憶を錆びさせ腐爛させるのは
誰? 波の先端で波にぶつかり
咆哮する海を鎮まらせるのは

 四
誰? 樹木の中に身を隠して果実を作り出し
そ鳥たちに天の上から飛んで来させるのは
誰? 鷲鷹の嘴を授け与えて
そいつたちに石の中の虫を啄ませるのは

 五
誰? 時間を引き留めようと祈りを捧げていて
祈りの中でこっそり時間を逃がすのは
誰? 青春の花を振りかけていて
そのあとでまた青春の花びらによって埋葬されるのは

 六
誰? 空想の楼閣に運び入れて
太陽をテラスで散歩させるのは
誰? 夢に樹を切り倒していて
啄木鳥たちの抗議を無視するのは

 七
誰? 盗掘された古い墓の中に隠れて涼み
墓荒らしの秘訣を見つけるのは
誰? 闇市で文化財を売り
祖先の霊魂から政府に告発されるのは

 八
誰? 幻覚の河原で夢遊病を患って
貝殻を拾っているのは
誰? 法螺貝をこじ開け
陸地を洪水で埋没させるのは

 九
どんな指? 都会で慌ただしく薔薇を売っているのは
どんな指? 少女の股でせっかちなのは
どんな唇? 堅い契りを交わしているのは
どんな顔? 真っ昼間に消えていくのは

 十
誰? 世界の終りの到来を予言しているのは
誰? 他の星に住むのを渇望しているのは
誰? 心の中で地球を放棄しているのは
誰? 人類の最後を幻想しているのは


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