一
雪は枝にずしりのしかかり、休息
乾燥していて
たらふく食べた白猫のように
樹から降りられない
二
樹の上の空は鍋底のように黒々と深く
鴉の黒い高鳴きからは煌めきが零れ
色を持たない冷たい流れが暗幕の下を往き来する
三
夜が降りてきた
即位した腹黒い帝王のように
そいつは一切を征服しようと
陽に照らされたことのある万物を征服しようと企む
四
夜と雪とは二相の色である
特殊な匂いをしている空気を
夜がいよいよ暗くなっても、雪はやっぱり真っ白
雪がいよいよ白くなっても、夜は依然として漆黒
五
風が雪の上を吹いて来ると
風は白く変わり
少女が雪の上を歩いて来ると
雪はその色とりどりの夢を白く染める
六
常春樹の葉は雪を被ったまま緑の光を探り当て
自分は誰なのか忘れた…
飢えた狼の瞳の中に揺れ動いている
匿名の快感に落ちていく
氷の上にある石は氷の下へ行くことを渇望し
氷の下にある石は喘ぎようもなく
魚式の呼吸を懇願している
そして、雪の下の土地に噛みつ
七
乾いた枯れ草は雪の重圧の下で
野火に焼かれたいと祈っている
その葉と茎には牛と羊の歯の痕
鎌に刈られて痛み干涸らびた緑の血の斑がまだ残りく
枯れ草は懸命に歯を伸ばす
狂ったように・・
そして、雪の下の土地に噛みつ
八
真っ黒な夜がのしかかり
その夜の中を純白の雪が降り
軒下の鳥はねぐらへ帰るのを忘れてしまう
鳥達は侘びしく鳴いて
引き金を引く手を凍えさせる
九
彼方で、黄昏の火影が
夜と雪との二相の色合いで煌めき
広場中央の裸体像は
哀しげに足跡を欲しがっている
「どうぞアヒルの羽入りのどてらを持ってきて下さい」
十
雪は夜の中を降り重なり
夜は雪の上に凍結し
樹の上の雲は黒く汚れた雑巾のように
天空に凍り付いている


